嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
やっと過去がとりもどせる。


何度この手に抱いても、どこか見えない壁があった。

それを千雪の恥じらいと遠慮だと思っていた自分の鈍感さに呆れる。

『結婚しないで』

泣きながら懇願する千雪。

千雪だけが好きで、千雪しか目に入らないのに、一体オレが誰と結婚するというのだろう。



「10年前・・・・・?」

千雪が小さく頷いた。

「ずっと・・・・・待ってた・・・・・雪の中で・・・・・体育館の裏で・・・・・」

「・・・・・体育館?」

後から後から溢れ出す涙を掌で拭ってやりながら、千雪が言ったことを反芻する。

「オレは図書室で待ってるってメールしたやろ」

千雪が丸い瞳を大きく見開き、首を横に振った。

「だって・・・・・2度目のメールで・・・・・」



2度目のメール・・・・・?



そんなもの送っていない。

『ガードが緩いっていうかいい加減』

突如思い起こす同窓会で言われた言葉。

あの日、オレは携帯を入れた鞄をどこに置いていた?

教室か生徒会室か・・・・・。

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