嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


例えそこに恋愛感情の欠片もなくても自分の目の前で他の男に優しくする千雪なんか見たくも無かった。


一緒に暮らし始めてから、家事はお互いにするということになっているけれど、早く帰宅出来る分、どうしても千雪の方が負担が大きい。

勿論、そのことで千雪が文句を言うことはない。

「だって食洗機に乾燥機付き洗濯機にお掃除ロボットにって揃えて貰ったのに文句なんか言えへんよ」



オレの恋人は優し過ぎる。



仕事を終え、家路を急ぐ。

珍しく残業もなく、早く帰れることで足取りも軽い。

千雪とゆっくり食事ができそうだ。



マンションの玄関扉を開けると同時に浮かれたオレの心に冷水がかけられる。


それもとびっきり冷たいヤツ。


三和土にはいつもはない履物がズラリ。


瞬間的に頭に血が上る。


玄関から真っ直ぐリビングまで伸びる廊下をわざと乱暴に足音を立てて歩きドアをバンッと開けた。


「あら、お帰りなさい。修」


広い筈のリビングの人口密度がやけに高い。
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