嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
今日の図書委員はサボリだな。
まあ、いなくても全く困らないんだけど。
コトリ。
静寂に響く微かな音。
空耳?
ひとつひとつ、書架の間を足音を忍ばせて見て行く。
幾つ目かの書架の間
そこで見たのは
脚立に座り、西陽を受けて本を読む端正な横顔の男の子。
自分の世界に入り込み、わたしにはほんの少しも気付かない。
まるでそこだけ切り取られた絵画のように美しい光景で、すっと息を呑んだ。
わたしの入る余地はなく、また足音をさせないように戻り、入口まで行く。
そっと扉を開けて、『本日閉館』の札を掛けた。
万が一にも人は来ないと思うけれど、
彼の時間を邪魔してはいけないような気がして。
気さくで、賢くて、誰にでも平等に優しい元生徒会長・・・・・そんな彼の意外な一面。
彼の瞳は濡れていた。
自分の本に意識を戻す。
相変わらず物音ひとつしない部屋の中で、彼は静かに泣いているのだろうか。