嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


箸を口に運ぶ様子まで美しい友人は、何か嬉しそうだ。

「今度アンタの課に東京から転勤してくる人の話聞いた?」

「うん、今朝斉川課長から。イケメンやねんてね」

「ウチの常務情報。コレ極秘やからね」
奈々が声を顰めた。

「ヤバい話なら聞かへんからね」

「ヤバいとか違うわよ。あのね、会長の外孫らしいわよ?」

「へぇ」

「反応薄っ。玉の輿のチャンスかもしれへんのに何よ、それ」

「玉の輿とか興味ない。カレシとか要らないし」

「枯れっ枯れっね!アラサー女子がそんなんでええの?」

呆れたように奈々がこっちを見る。

「ええの。地味に地道に生きていくから」

別に独身主義な訳でもないし、イケメンを見れば普通にカッコイイなとも思うし、ときめくことだって皆無じゃない。

大学生の頃はカレシがいたことだってある。



ただ恋することが億劫なだけ。


「わたしのことより自分はどうよ?そろそろ結婚の話が出てるんやないの?」

「まだー。ま、30までにはね。あっちも仕事忙しいし」





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