嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「成海!?大丈夫かっ」

課長に背中を少し乱暴にさすられる。

「だ・・・・・大丈夫・・・・・。すいません、お見苦しいところを・・・・・」

出来るだけ下を向いたままで喋ろうとしたけれど、今日から上司になる人の前で失礼かと思い直し、覚悟を決めて顔を上げた。



覚えていないことを期待して。


「事務の成海千雪です。よろしくお願いします」


池上くん、久しぶりだね・・・・・と付けたした方が良かっただろうか?


笑えない。
大人になった池上くんを想像していたら本人だった。

アルミホイルをガサガサと開ける音がして、池上くんがおにぎりを口にする。

「あ、うま。タラコだ」

「しまった!オレの好物!」
斉川課長が悔しがった。

「鮭、あげますからダダ捏ねないでください」

もう一度おにぎりを手渡す。

「あ、成海。お前暫く池上についてくれ。新田が家庭の事情で引き継ぎする間もなく行ってしもたやろ?お前、分かる範囲で取引先情報教えてやってくれ」
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