嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
もうひとつのコーヒーを池上くんの前に置いた。
「自分のは?」
「わたしは紅茶を持って来てるので」
タンブラーを見せる。
「なんか朝飯とか饅頭とか紅茶とか色々持ってんな。何なんだ」
笑い上戸なのかまだ止まらない。
「もう!主任、仕事しますよ、仕事!」
ファイルをバンと机に置き、池上くんの隣に座った。
「おう、よろしく」
流石に仕事と聞くと、笑いを引っ込める。関西弁のイントネーションがあんまりないような気がする。
大学からずっと東京だったからだろうか。
なんだか少し寂しい。
「これが新田さんが担当してた会社の担当者の名刺ファイルです。ちょっとクセがあったり面倒な人はメモを付けときました」
「全部把握してた?」
「殆どは。わたしに電話をしてくる方もいらっしゃるので」
「成海、優秀だな」
「そんなことないですけど・・・・・」
後は取引先の資料を見ながら、説明を加えていく。実際に回ってみて、自分で直に色々と感じた方が分かるだろうと思う。