嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「おかしなのに引っかかるよりマシだろ」
「おかしなんでもええぞ。それはそれで面白い」
なんてことを言いやがるんだ、このジイさんは。
ジイさんがあんまり早く呼びだすから、話が終わってもまだ7時半にもならない。
一応、営業課のフロアまで降りてみたけれど電気もついていない。一旦外に出てコーヒーでも飲んで来るかと踵を返した。
「ひょっとして池上くん?」
声を掛けられた方に顔を向けると、すっきりとした立ち姿の甘いマスクのイケメン。
「はい。今日から営業一課でお世話になります」
自分よりは年上だろうとアタリをつけて頭を下げる。
「あ、やっぱり。営業一課長の斉川です」
良かった。
感じのいい人だ。
どんなヤツが上司になっても仕事はキチンとできる自信はあるが、それでもいい人にこしたことはない。
「早いね」
「ですね。なのでちょっと外で朝飯でもと思って」
「ちょうどええわ。ついといで」
そう言うと薄暗い部屋に入って行く。