嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


オレが彼女の声を聞き逃していたなんてーーーーーー。



2人っきりのミーティングルーム。

思わず左手の薬指を盗み見る。

小さな手に細い指。そこに装飾品は一切ない。しない主義なのか・・・・・?

大原・・・・・いや成海は事務的に仕事の説明をしていく。わかりやすく纏められたファイル。ところどころ付箋が貼ってあってメモ書きされてある。

成海がかなり優秀な営業事務だということが分かった。

情けないことに、2人きりでいたのに『久しぶり』の一言が言えなかった。成海も言わなかった。



もう忘れられているのかもな・・・・・・・。




成海との打ち合わせが終わると、課長と外回りに出る。元々京都出身だし、東京に初めて行ったときのように道に迷って困るということはない。

「成海って毎朝あんな早く出社してるんですか?」

取引先に向かう道すがら、課長に聞いた。

「そうだね、毎朝だね。満員電車が苦手やって言うてたな」
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