嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「知名度が違うよ。みんなの憧れ生徒会長と一般人のわたしやと」

池上くんと話しながら石油ストーブの火を落とし、窓の施錠を確かめた。

「大原」
わたしの後を付いてくる池上くん。

「うん?」

「オレ、ひょっとして見られてた?」

ちょっとだけ池上くんの顔を見つめる。
恥ずかしそうに伏し目がちにするのが何とも色気がある。微かにくすりと笑い、唇の前で人差し指を立てた。

「内緒ね」

途端に池上くんが真っ赤になり頭を抱えてその場に蹲る。

「・・・・・うわ・・・・・マジ・・・・・?カッコ悪ぃー・・・・・」

「そんなことあらへん。感動したら誰だってそうでしょ?」

「いや、男が公共の場で泣くとかナシやろ・・・」

「それだけ本の中に入り込んでたんでしょ。恥ずかしいことないやない」

カバンを手に取りながらいたたまれない風情の池上くんを慰めた。

池上くんが蹲ったまま顔を上げて、上目遣いでわたしを見る。

「軽蔑せえへん?」
< 4 / 153 >

この作品をシェア

pagetop