嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「知名度が違うよ。みんなの憧れ生徒会長と一般人のわたしやと」
池上くんと話しながら石油ストーブの火を落とし、窓の施錠を確かめた。
「大原」
わたしの後を付いてくる池上くん。
「うん?」
「オレ、ひょっとして見られてた?」
ちょっとだけ池上くんの顔を見つめる。
恥ずかしそうに伏し目がちにするのが何とも色気がある。微かにくすりと笑い、唇の前で人差し指を立てた。
「内緒ね」
途端に池上くんが真っ赤になり頭を抱えてその場に蹲る。
「・・・・・うわ・・・・・マジ・・・・・?カッコ悪ぃー・・・・・」
「そんなことあらへん。感動したら誰だってそうでしょ?」
「いや、男が公共の場で泣くとかナシやろ・・・」
「それだけ本の中に入り込んでたんでしょ。恥ずかしいことないやない」
カバンを手に取りながらいたたまれない風情の池上くんを慰めた。
池上くんが蹲ったまま顔を上げて、上目遣いでわたしを見る。
「軽蔑せえへん?」