嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「まずは課長の意見を聞いてからやね」
「そうですよね・・・・・」
とりあえず話を終わらせた。
わたしより1つ下の神林くんは、優秀だけれど押しが弱い。
「声が好きって、実物見たらガッカリして余計商談が上手くいかへんかったらどうするんやろ」
誰にも気付かれないように呟く。
課長が外出しているからこれ以上の話しを進められず、神林くんが話しかけてくる前まで作成していた契約書を仕上げ、データ入力をしていく。
時計を見上げるともうすぐ3時。
コーヒーでも入れるかと腰を上げた。
「成海!」
呼ばれた方に顔を向けると、外から帰ってきたばかりの課長が親指をミーティングルームに向ける。
神林くんが課長の側でちんまりしていた。
「神林から聞いた。安井物産の浜中部長だろ。お前、面倒な人に好かれたなあ」
「声だけですよ?」
「成海さんの声、なんかほっとするし・・・・・」
「阿呆、お前がしっかり部長の相手が出来てたらスケベ心も抑えられたんだろうが」