嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「なに、それ」
思わず吹き出した。
池上くんがやっと笑顔を見せる。
切れ長の一重の瞳、高い鼻、少し薄めの唇。それらがこれ以上ベストな配置はないだろうと思うくらいに綺麗に小さな顔に並んでいる。
パッと見るとあまりに整い過ぎて冷たい印象を与えかねないのに、笑うと人懐こそうな表情。
ズルイなあ・・・・・・・・。
これで勉強もスポーツも出来て、リーダーシップまであるなんて、神様、贔屓し過ぎかも。
「大原?」
余計なことを考えて、少しの間黙り込んだわたしを不思議そうに池上くんが見ている。
「あ、ごめん。帰る用意できたら鍵閉めるから」
電気を消して、どちらともなく肩を並べて図書室を出た。
池上くんが閉館の掛札に気付く。
「・・・・・なんかオレ、思いっきり気を遣われてた?」
照れくさそうに頭を掻く。
「誰も来ないのは分かってたんやけど、見られるのは気まずいかなと思うて。いらんことしたかな」