嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
先斗町の料理屋。
相手方は浜中部長とその下の課長。
ウチは営業本部長と池上くんと神林くんとわたし。
接待という場に出たことがないわたしは少し戸惑い気味だったけれど、部長と池上くんがさり気なくフォローしてくれていた。
課長、さすがです。
神林くんだけでは心許なかったです。
「成海さん、お酒じゃなくてお茶かい?」
「申し訳ありません、飲めないんです」
徳利を持って、浜中部長の猪口にお酒を継足した。一息に呷った後で、わたしに新しい猪口を差し出してくる。
「一口だけ、ね」
受け取ったものの、どうしようかと思案した。事情を分かってくれている課長がいると何とかしてもらえるんだけど・・・・・。
「成海さん、一口だけ。フリだけでも」
ウチの部長が目で謝りながら言った。