嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


トントントン・・・・・。
規則正しい音が聞こえる。

ほんのりと鼻先に味噌の匂い。

あれ、昨夜はオレ実家に帰ったんだったか・・・・・。寝返りをうとうとして自分がベッドに寝ているのではないことにはっと気付き、飛び起きた。

すっかり明るくなった室内に一気に頭がはっきりする。

「あ、主任、起きました?」

成海がキッチンから顔を出した。

「悪い、ちょっとのつもりがきっちり寝ちまった」

「いいですよ、遅かったですもん。朝御飯用意してますから食べてってください」

そう言って笑う成海にバスルームで顔を洗うように追い立てられる。

不覚・・・・・。

バスルームに行くとタオルと新しい歯ブラシが置いてあった。つい鏡回りをチェックして、そこに男の気配が感じられないことに妙に安心する。

洗顔を終えてリビングに戻ると、使い込まれた飴色の丸い卓袱台に食事が用意されていた。

「和食を用意したんですけど良かったですか?」

「ああ、何でも。悪いな」
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