嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
毎日会社で顔を合わせるだけでも心が煩く騒ぐのに、週末に家でも一緒にいて、わたしは大丈夫なんだろうか?
10年前、必死で忘れようとした初恋の人。どうして今更現れて、心を掻き乱すのだろう。
あの頃ならまだ何も考えず無邪気に好きでいられた。
今は大人の事情が理解できるようになったせいで、好きになっても無駄だと自然に自分の気持ちにストップがかかる。
それでも
持ってはいけない想いだと分かっていても
傍にいられることを喜ぶ自分がいた。
なんだか休んだような、休めなかったような中途半端な週末を過ごし、また一週間が始まる。
自分の席で持ってきたおにぎりと文庫本を広げる。
「成海」
「あ、おはようございます。課長」
「金曜日は悪かったな、もう大丈夫か?」
「ああ、翌日にはすっかり」
「もうオレ、電話でさんざん叱られて心が折れそうだった。お前、あのシスコン兄なんとかしろ、あれはもう病気の域だ」