嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「残念ながらもう長煩いで慢性化してて治療不可能です。対症療法がせいぜいで」
「嫁に行くとか言ったら死ぬんちゃうか?一回言ってみろよ」
「死ぬのが分かってて言える訳ないやないですか。無茶言わんといてください」
クスクス笑いながらおにぎりを一つ手渡した。
「どうするんや、結婚でけへんぞ」
「あの兄と闘って勝てる人を気長に探しますよ」
課長がパクリとおにぎりにかぶりつき、ぎしっと椅子の背を鳴らして隣の席に座る。
「意外と近場にいてそうな気もするけどな」
「そんな骨のあるオトコ、周りにいましたか?」
意味深な笑顔がこちらに向けられた。
「自分で気付かへんと有り難みが減る」
「課長が宗旨替えして闘ってくれるとか?」
「それこそ無理やろ。オレ人知れず山奥に埋められたり社会復帰でけへん身体にされたりすんの嫌や。手近で手軽に解決しようとすんな」
そう言って頭を小突かれる。
「ですよねー。前途多難やわ」