嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「何が前途多難?」
「主任!」
池上くんが横から覗きこむように視線を合わせた。
「成海の厄介な兄ちゃんのことや。お前も金曜日に会ったんやろ?」
「ああ、医者でイケメンの・・・・・」
「金曜日はすいませんでした・・・・・ってかありがとうございました」
池上くんがふわりと微笑む。
余計なことは言わない。
おにぎりを渡すとサンキュと言い、直ぐに包みを開いて食べ始めた。
この朝の風景にもなんだか慣れてきたなあと感じる。イケメン2人、侍らせて気分もいいんだけど社内中の女子に嫉妬されそうだ。
「そうや、成海。ファイリング頼んでいいか?」
「はい、いいですよ。でも課長、この間清美ちゃんがしてたんじゃ・・・・・?」
「やらせたら無茶苦茶だったんだよ」
ビジネスバッグがドンと乱暴にデスクに置かれ、いつの間にか出社してきた小早川さんが苦々しそうに言い捨てた。
「最初だけ一緒にやったんですけど」
「合コンだか何だかあったみたいで残業したくなかったんだろ、適当にやってあった」