嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
簡単に、気軽に課長や小早川さんがわたしを触ったり揶揄ったりするから池上くんまでわたしの扱いが気安い。
それが少し嬉しくて、少し辛い。
持て余し気味の自分の心に喝を入れて、仕事に取り掛かった。
午前中で終わると思っていた仕事が、途中でイレギュラーな仕事を頼まれたりして午後にまでずれこんでしまい、ファイリングを始めるのが定時間近になってしまう。
フロアのわたしたち1課の島にはまだ外回りの人たちが帰社していなくて事務の女の子しかいない。
わたしがやり直してしまうのは容易いけれど、今後のこともあるので清美ちゃんに声をかけた。
「一緒にやり直ししよ。2人ですれば早いし」
清美ちゃんがチラリと時計に目をやる。
「明日じゃダメなんですかぁ?もう定時やないですか」
「うん、でも本来ならもう出来てないとアカンものでしょ。今日中にやってしまった方がいいかな」
「それやったら成海さん一人でやった方が早いですよ。わたしに教えながらやと時間かかるし」
「ちょっと!清美ちゃん、それは違うんとちがう?」