嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


横で聞いていた原田さんの声に苛立ちが混じる。

「原田さん関係ないやないですか。わたし今日料理教室の日なんで残業できないんです」

「うん、でも清美ちゃんのミスやし自分でやった方がまた今度やる時に楽だよ」

清美ちゃんが鼻から息を抜くように笑った。

「そういうの、やめて欲しいんですよね」

「え?」

「定時はこの時間に仕事を終わりましょうっていう時間のことですよね?残業してまで大したことない仕事終わらそうとか有り得ないんですよ。成海さんがイイコぶって何でも仕事引き受けるのは勝手ですけど、わたしにまでおしつけんといてください」

「清美ちゃん!それは成海ちゃんに言い過ぎ!」

「言い過ぎやったらすいません。でもわたし、もともと営業事務なんて志望してなかったし。受付とか秘書課志望やったんですよね」

あーあといった風に言い、帰り支度を始める。何か言い返そうとするけれど、清美ちゃんに言われたことが心に堪える。
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