嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「・・・・・わかった。わたしがやるわ」

「成海ちゃん!」

他の事務の女の子たちも心配そうにこちらを伺っていた。騒ぎを大きくしないためにもここで終わらせた方がいい。

「そうしていただけると助かります」

時計の針が定時を指すと、清美ちゃんの姿がフロアから消えた。溜息をひとつおとし、ファイルと書類を持って席を立つ。

「原田さん、ミーティングルームで広げてこれやってきますね」

「成海ちゃん、気にしたらダメよ。あのコ、どこかの重役の娘だかなんだかで我侭いっぱいに育てられてるらしいから。きっとさっさと結婚相手探して辞めていくわよ」

返事の代わりに曖昧な笑みを返してミーティングルームに篭った。机の上に書類を広げて作業に没頭する。余計なことを考えないように。

『イイコぶって』

そんな風に見られていたのか。
お金を貰う以上は与えられた仕事はきちんとこなさなければと思っていただけなのに。

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