嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「大丈夫。わたしもカレシいたら池上くんと2人っきりはご遠慮申し上げるから」
靴に履き替えて、外に出ると夕闇が迫る。胸に吸い込む空気の冷たさが痛い。
「京都のこの底冷えも今年で暫くお休みやなあ」
マフラーを巻いた口元から白い息を吐きながら池上くんが呟いた。
「そうやねえ・・・・・東京はまた違った寒さなんやろか」
他愛のない話しをしながら地下鉄に乗り、わたしの最寄り駅まで移動して適当なカフェに入った。
「ん。リクエストのソイラテ」
席に座って待つわたしの目の前に差し出されたマグカップ。
「ありがとう、ホンマにおごってくれるんやね」
「オレは有言実行の男やで」
夕暮れのカフェ。
窓辺の席に2人並んで座って暫く無言で手にした温かい飲み物に集中する。
「大原、毎日図書室に行ってんの?」
「ん、ほとんどかな。大体お昼ご飯食べてから閉館まで本を読んでる。静かでいいの」
新校舎の進路指導室の隣に自習用に学習室ができて、受験を控えた3年生も大半がそちらへ行く。