嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「お腹すいてしもたし、有り難くいただきます」
おかしな考えを振り払うようにわざと声を張って言い、サンドウィッチを手に取って、2つ入っているうちの1つを池上くんに渡した。
「主任もお腹空いてはるでしょ?半分こ」
池上くんがふっと息を吐いて笑い、サンドウィッチを受け取る。2人で暫く黙って食べた後、池上くんに促され帰り支度をした。
当然のように一緒に会社のビルを出る。
駅に降りる階段の入口で池上くんが足を止めた。
「地下鉄で良かったよな?オレは歩きだからここで」
「あ、はい」
そういえば池上くんがどこに住んでいるのかなんて気にしていなかった。
「歩きって近くなんですか?」
オフィスビルが立ち並ぶ場所。
池上くんが骨ばった人差し指で指した方向には半年ほど前に何かの跡地に建った天を突き刺すようなタワーマンション。
「徒歩10分」
悪戯っぽく唇の両端をあげる。
「・・・・・すご・・・・・セレブ・・・・・」