嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
あの日、成海に想いを告げるために図書室に呼び出した。
何時間も待って、来ない成海を諦めて沈む気持ちを抱えて帰った。
別の場所で成海はオレじゃない誰かに告白するつもりだったのか。
それにケリがついてからオレのところに来るつもりだったのか。
「・・・・・それで、成海は・・・・・?」
荒れ狂う心の中を悟られないように平坦な声を出す。
「すっかり風邪をこじらせた上に持病も悪化させて半年くらい入院した。大学も1年遅れた。そっから兄貴の心配症も悪化した」
付け足すように踏んだり蹴ったりだなと課長が呟く。
同級生だった成海が1年遅れた訳が分かった。
雪の中、体調が悪いのをおしてまで長い間立ち尽くしていた成海。そんなにその男が好きだったのか。
小早川がオレのグラスにビールを継ぎ足す音で我に返る。
「池上、過去に嫉妬すんなよ」
小早川の言葉に思わず苦笑いした。
「するか。ただ成海が可哀想だと思っただけだ」