嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「借りるぞ」
池上くんがソファーからクッションを一つ取り、ラグに座って本を開いた。邪魔をしないようにコーヒーを入れて卓袱台にのせておく。池上くんの本を真剣に読む横顔を時々盗み見ながらわたしも本を
読む。
あの頃に戻ったような穏やかな時間が流れる。
一緒に食事をして、他愛のない話を時々して、それぞれ好きな世界に没頭する。言葉はあまりないけれど、2人で同じ空間に居られることが幸せで愛しかった。
池上くんと過ごす土曜日。
わたしにとっては至福のとき。
このささやかな幸せが、少しでも長く続きますようにーーーーー。
12月に入ると会社も師走の忙しなさで落ち着かない。
お昼休みの社食の喧騒。
部署によって時間をずらしているせいか混雑はそれほどではないものの、8割以上の席は埋まっている。
「さあ千雪、好きなのどれでも選び」
「好きなのって・・・・・」
テーブルの上に並べられた写真。
目の前には奈々の笑顔。
「大輔の友達とか先輩でフリーのオススメ物件」