この度、友情結婚いたしました。
「お先に」

春樹の返事を聞かずそのまま部屋の入ろうと背を向けた時。

「また辛くなったら愚痴れよな。……それくらいならいくらでも聞いてやるから」

背後から聞こえてきた声に足は止まる。

すぐに振り向くも、春樹は一足先に部屋に入ってしまった。

「春樹……」

茫然と春樹を見つめていると、カーテンを閉めるために振り返った彼と目が合う。
その瞬間、まるで子供のようにあっかんべーしてきたものだから、思わず吹き出してしまった。

「本当にバカなんだから」

でもありがとう。

言葉とは裏腹な気持ちで埋め尽くされていく。

思えばいつもそうだった。
辛い時そばにいてくれたのは春樹で、それは春樹も同じなはず。

私達、そうやって今まで過ごしてきたんだよね。

よく友達は「男女間の友情なんて成立しない」なんて言っているけど、私と春樹はそれが成立していると思う。

恋人にするには絶対に嫌なタイプだけど、友達にするなら最高にいい奴なんだ。
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