この度、友情結婚いたしました。
身体中の力が抜けてしまうくらい盛大な溜息を漏らし、「分かった、すぐ行く」と伝えると、彼は「少しでも早く来いよ!」なんて生意気なことを言った後、さっさと通話を切ってしまった。

あまりに身勝手な言動にスマホを見つめたまま唖然としてしまう。

なんて奴だ……!
「ありがとう」の一言もないなんて!

こうなったらお望み通りダッシュで行って、理由を聞く前に文句の五つや六つ……いや、それ以上言ってやろう。

乱暴にスマホを鞄にしまい、タクシーを拾って春樹の会社へと向かった。



「相変わらず大きなビル」

あれからタクシーに揺られること約二十分。
渋滞にはまることなく辿り着くも、春樹の勤め先のビルがいつ見ても大きくて、つい見上げてしまっていた。

全国に支店がある銀行の本社だもの。
そりゃこれだけ大きくて当たり前かもしれないけど。

早速到着したことを春樹に伝えるべくスマホを取り出す。

さすがにロビーに入れるほど勇気を持ち合わせていない。
< 16 / 379 >

この作品をシェア

pagetop