この度、友情結婚いたしました。
「ちょっと春樹?いい加減にしないと―……!」

我慢も限界に達し怒りが爆発する五秒前、いきなり春樹は馴れ馴れしく肩に腕を回してきた。

その途端、彼の爽やかな香水の香りが鼻を掠め、密着する身体に言葉を失ってしまう。

そんな私を抱き寄せたまま、春樹は歯が浮くような台詞を並べてきた。

「相変わらずまどかはかわいいな。あっ!仕事は大丈夫だったか?疲れただろう。帰ったら俺がなにか作ってやるからな。なんならマッサージもしてやる」

「……はい?」

相変わらずぎこいない笑顔で無理して言っているの、バレバレだ。
なのにどうしてこいつはこんなことを言ってくるわけ?

とうとう頭でもおかしくなってしまったのだろうか。

茫然としたまま至近距離でガン見してしまっていると、ふいに春樹と目が合う。
すると彼は片目を何度も閉じて、まるで『合わせてくれ』と言うように、訴えかけてきた。

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