この度、友情結婚いたしました。
そう言うと琢磨は立ち上がり、茫然とする春樹を二度と見ることなくリビングを出て行く。

「あっ……琢磨!?」

咄嗟に後を追ってしまった。


けれど琢磨は立ち止まることなく足を進め、「お邪魔しました」とこちらを見ることなく言うと、玄関から出ていってしまった。


「琢磨、待って!」


慌てて私も下ばきを履き、後を追い掛ける。

すると私が追い掛けてくることを想定していたように、少し先で琢磨が待ち構えていた。


「琢磨……」

ゆっくりと歩み寄ると、彼は眉を下げ謝ってきた。


「悪かったな、突然来て」

「ううん、そんな。……あのさ、琢磨……」


〝どうして私のために、怒ってくれたの?〟


そう言葉が続かない。
理由は分からないけど、なぜか言葉が出てこなかった。

けれど琢磨には私が聞きたいことが伝わってしまったのか、ますます困ったように眉を下げた。
< 199 / 379 >

この作品をシェア

pagetop