この度、友情結婚いたしました。
最初は展示物を見ている最中も、どこか緊張しっぱなしだったけれど、その緊張も可愛いペンギンや魚、そして大好きなイルカを見ているうちに和らいでいった。


「春樹見てみて!めっちゃ可愛い~!」

「お前はしゃぎすぎ。まだショー始まってねぇのに」

「だって泳いでいるだけでも可愛んだもん!」


イルカのショー開園までまだ二十分はあるものの、既に会場に入場することはできる。

そのおかげで席を囲むようにしてある大きな水槽の中で、時折顔を見せて泳ぐイルカを見ることができていた。

しばし可愛いイルカに視線を奪われてしまう。

「やっぱ水族館に来て正解だった」

「え、なにが?」


イルカに熱い視線を送ったまま問いかけると、「それは……」と言いかけたと思ったら、急に顔を近付けてきて、わざとらしく耳元で囁いた。


「まどかの喜ぶ顔が見れたから」って――。


朝から何度キザすぎる台詞を言ってくれるのだろうか。

ぐうの音も出ないじゃないか。おまけにイルカの可愛さを堪能する余裕もなくなっていく。


「あのさ、そういうのいらないから」

「そういうのってなに?」

前を見据えたまま言えば、すぐに突っ込んだ質問がきた。

「そういうのはそういうのですよ」

「だからどういうのですかって」
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