この度、友情結婚いたしました。
「すみません、この服このまま着ていけるようにしてもらってもいいですか?」

「あっはい!かしこまりました!」


慌てて店員さんは着ていた服を入れる袋を取りに行った。
その後ろ姿を見送ると、春樹はまじまじと私を見てきた。


「うん……やっぱ俺、センスいいわ。なかなか似合うじゃん」

「いや、それよりも買うのはいいけど、このまま着て帰るのは勘弁してほしいんですけど」

誉められたことを完全スルーして言うと、春樹は面白くなさそうにムッとした。


「お前可愛くねぇな。ここは素直に笑顔で〝ありがとう〟って言うべきなんじゃねえの?」

「可愛くなくてけっこう!それよりあんたに、言いたいことが山ほどあるんですけどっ!」

「なんだよ」


ブスッと顔を顰める春樹に、先ほどの文句をたっぷり言ってやろうと息を吸った時。

「お待たせいたしました。値札の方、取らせていただきますね。お会計はレジでお願いします」

タイミングよく店員さんが戻ってきてしまい、文句爆弾は不発に終わってしまった。



「おい、人に服を買ってもらっておいて、そのぶっさいくな顔はなくね?」

「そりゃブサイクな顔にもなりますよ。勝手に試着させて、米俵のように担いで恥を晒され、知らない人に意味不明なこと言われたら」


あれからワンピース着用のまま、遅い昼食になっちゃったけど、フードコートで軽食を食べていた。
けれど水族館の時のように、笑って食事を楽しめるはずなどない。
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