この度、友情結婚いたしました。
心配する私を余所に、呑気な春樹は性懲りもなくさらに身体を密着させてきた。

「まーどか!いい加減決めたか?なに食いたいか」

語尾に音符マークでもついていそうなほど上機嫌な春樹に、怒りのボルテージは最高到達点に達していく。

「なんか言えよ」


バカップルの如く、背後から抱き着き身体を左右に揺らされた瞬間、春樹の顎めがけて思いっきり首を後ろに振った。

「いってー!!」

頭突きアッパーを食らった春樹はすぐさま身体を離し、両手で顎を押さえしゃがみ込んでしまった。


うん、きっと痛かったに違いない。私だっていまだに後頭部がジンジンと痛むのだから。
けれど当然の報いだ。春樹のせいで今日は散々な思いをさせられてきたのだから。


「まどか、てっめ~……!」

涙目になり恨めしそうに私を睨む春樹。悪いけど、謝る気なんてさらさらない。

より一層注目を浴びている現状から逃れるように、春樹を残しカート押していく。


「あっ!おい!なにシカトしてんだよっ」

当然春樹は立ち上がり、後を追ってくる。

「言っておくけど謝らないからね。悪いのは調子に乗りすぎたアホな春樹だし」

「アホだと!?」

「早く買って帰るよ。どこかのアホでバカでお調子者のせいで、すっかり悪目立ちしちゃったから」


なにか言いたそうに口をパクパクさせる春樹を一切無視し、適当な食材をかごの中に入れ、そそくさとお会計を済ませてスーパーを出た。
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