この度、友情結婚いたしました。
喧嘩しているのに、手を繋ぎたいとか意味が分からない。

お互い見えない火花を散らし合う中、先に降伏したのは春樹だった。
目を伏せ、つなぐ手の力を強めてきた。


「いいじゃねぇかよ、デートなんだし、少しくらい調子に乗ったって。……俺はまどかとイチャつきたいだけなのに」

「イチャつきたいって……中学生か!」


ノリの良い突っ込みをしつつ、すっかり私の心の中は大きく揺さぶられてしまっている。

だから困るんだってば。そういった反応されちゃうと。
らしくない春樹を見せられちゃったら、こっちも通常運転できなくなっちゃうんだから。

胸の高鳴りを押さえこむようにギュッと唇を噛みしめてしまう。


「うるせぇ、なんとでも言え!……好きなんだから仕方ねぇだろうが」

ボソッと囁かれた声に、一気に体温が上昇してしまう。
本当に困る。なぜかちょっぴり嬉しいと思えているのだから。


なにも言い返せずにいると、春樹は耐え切れなくなったようで乱暴に「帰るぞ!」と言うと、手を繋いだまま歩き出した。

引かれるがまま商店街を抜けて行く中、異様に春樹の背中が大きく、そして逞しく見えてしまう。


ねぇ、春樹。……あんたは本気なの?私のことを散々好きって言っておきながら、いつもの調子で少ししたら、平気で浮気とかしちゃうんじゃないの?


知りすぎているからこそ踏み込むことが出来ないのかもしれない。自分の気持ちとしっかり向き合う勇気が出せないのかも。
嫌になるほど、あんたのこと知り尽くしちゃっているから……。

考えれば考えるほど胸が苦しくなる中、引かれるがまま自宅に向かって歩いている時だった。


「げっ、なによあんた達!いつの間にそんな関係になっちゃったわけ?」
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