この度、友情結婚いたしました。
今にも琢磨に殴ってかかりそうな勢いの春樹を、身体を張って止めに掛かる。

「春樹落ち着いて!」


後ろから抱き着く形で止めるも、身体は琢磨一直線で押さえるのがやっとだった。
そんな中、琢磨が耳を疑うようなことを言い出した。


「そうだよ、落ち着け。それにたまたまそこのスーパーに買いに来ただけだから。それに話なら場所を変えていくらでも聞いてやるから。……俺も聞きたいことがあるし」


「琢磨に話すことなんて、なにもねぇよ!」

興奮状態の春樹とは違い、琢磨は冷静に、けれどどこか苛立ちを隠せないように言い放った。


「俺はあるんだよ。……さっき、あさみが言っていた話ってなに?友情結婚とか、まどかのこと好きじゃないとか。ちゃんと分かるように聞かせてほしいんだけど」


その瞬間、春樹は電池の切れたおもちゃのようにピタリと勢いを失っていく。

けれどそれは私も同じで、ゆっくりと春樹の身体から離れ、静かに私達を見据える琢磨を見つめてしまう。

腕を掴まれたままのあさみは、「しまった」と言うように額に手を当てている。


「詳しく聞かせてよ。……友情結婚ってやつをした事の経緯を」


動揺から異様に喉の渇きを覚え、生唾をゴクリと飲み込む。


ずっとあさみ以外の人には内緒にしてきた、私と春樹の〝友情結婚〟


そんな友情結婚が、バレてしまいました。

しかも相手は私達の幼なじみであり、私の元カレです。
これ……一体どうしたらいいのでしょうか?

しばし途方に暮れるのであった。
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