この度、友情結婚いたしました。
なぜだろう。琢磨の言葉が胸に突き刺さる。ズキズキと痛んで仕方ない。

私だって同じこと思っていた。きっと今の春樹の気持ちは一過性のもので、そのうち平気で浮気しちゃうって。

でも、最近はこのまま春樹の気持ちを信じていたいって思う自分もいて……あぁ、もうだめ。考えたくないよ、この先の気持ちなんて。


胸の痛みを消すようにギュッと瞼を閉じた時、春樹が口を開いた。


「はっ……随分俺に対して低い評価だな、それ」


琢磨に抱きしめられているから、春樹が今どんな顔をして言っているのか分からない。……でも声を聞いている限り、心穏やかではないことは確かだ。


「当たり前だろ?昔からお前がどんな男なのか、嫌になるほど知っているからな。だからその分、まどかのことは本気で好きになって結婚したと思っていたのに、がっかりだよ」


「何度も同じこと言わせるなよ、今はまどかのことちゃんと好きだから。つーかいつまで人の嫁を抱きしめているつもりだよ、いい加減離せ」

「無理だから」


春樹が手を伸ばしてきたのだろうか。身体は大きく右に揺さぶられた。


「はぁ?無理じゃねぇから!まどかは絶対渡さない」


「それがガキの考えだってまだ気づかないのか?それに俺はもう引き下がらないから。もう二度とまどかをお前なんかに渡さないから」


〝二度と渡さない〟


もしかして琢磨は、今も私のことを想ってくれているの……?

苦しいほど胸がギュッと締め付けられてしまう。

もうなにがなんだか分からないよ。春樹の気持ちも、琢磨の気持ちも、そして自分の気持ちも。いきなりすぎて頭も心もついていけない。

それなのに私の気持ちなんて置いてけぼりにされ、ふたりはますますヒートアップしていく。
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