この度、友情結婚いたしました。
「それで?」

「――え?」

不意に掛けられた声にあさみを見ると、彼女は眉を下げ頬杖をついて私を見つめていた。


「あんたが私に聞いてほしかったことって、もちろんバカ春樹のことなんでしょ?あっ、それとも琢磨の方?まぁ、時間はたっぷりあるし聞かせてみなさいよ。一体なにがあったのか」

「あさみ……」


だめだな。いつも厳しいあさみに優しい言葉を掛けてもらえちゃったら、どんなに努力したって隠せそうにないよ。

いまだに優しい瞳で見つめるあさみに、ゆっくりとだけどこれまでのことを話していった。




「……いやはや、ちょっと会わないうちに予想外の急展開を迎えていたわけだ」

「うん……」

あさみに全てを話した。

琢磨と春樹の浮気現場を目撃してしまった日からの、全てのことを。

包み隠さず話したわけだけど、終始口を挟まず聞いてくれて、そして今はなにか考え込んでいる様子。

あさみはどう思ったかな?さっきの話を聞いて。
なにも話さないから余計に気になってしまい、チラチラと様子を窺っているとやっと口を開いた。


「事情は分かった。そこでいくつか聞きたいんだけどさ、まずどうしてまどかはバカ春樹の浮気現場を目撃して泣いちゃったわけ?」


率直な質問に困ってしまう。それはやっぱり私もいまだに分からないことだから。


「ごめん、私も分からないの。昔から散々女の子と一緒にいるところを見てきても、特になんとも感じなかったのにどうしてあの時、見慣れた光景に泣いちゃったのか」
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