この度、友情結婚いたしました。
「俺はもちろん一晩だけの付き合いだと割り切っていたんだけど、さ。どうやら相手は本気に取っちゃったらしくて。ほら、同じ女としてお前の方が分かるだろ?あまり恋愛したことがない子って、ちょっと優しくしたりすると本気にしちゃうってやつだよ」

変なところを力説する彼に、空いた口が塞がらない。

友達としてはいい奴だけど、男としては最低な奴だとずっと前から思っていたけど、まさかここまで最低な奴だったとは。

「携帯の番号とアドレス教えていなかったのに、いつの間にか知られていてさ。頻繁にかけてきたり、メールが送られてきてたけど、返事をしなければそのうち諦めてくれると思っていたんだけど、さ。……なぜか勤務先や自宅まで知られちゃっていて。気付いたらいるんだよ、いつも!!」

怯えるように両腕を押さえる彼。

「挙句の果てに今、会社で付き合っている子まで突き止められて、その子に別れるように迫ったみたいでさ。その結果がこれ」

そう言いながら春樹が指さしたのは、タクシーの中で気になった頬に貼られていた絆創膏だった。


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