この度、友情結婚いたしました。
最初から分かっていたじゃない。思っていたじゃない。
私に対する気持ちは一過性のもので、そのうち飽きちゃうだろうなって。それが春樹っていう男なんだって。


「なんかごめんな。俺達、友情結婚っていう約束だったのにひとり暴走しちまって」


本当だよ。いきなりスキンシップしてきたかと思えば、キスしてきたり。

手のひら返したように良い夫になっちゃって。……まるで恋人同士でするようなデートまでしちゃって。
ここ最近の春樹には、振り回されてばかりだった。


「でもさ、俺はやっぱりこのまままどかと結婚生活続けたい。まどかが望むなら、もう二度と手を出したりしないし。……欲求不満になったら外で遊んでくる。だからこれからも俺と夫婦でいてくれないか?もうまどかがいない生活なんて、考えられねぇんだ」


なんだそれ。言っている意味がちっとも分からない。
私がいない生活が考えられない?それなのに外で浮気してくるだ?

とんだ最低男発言じゃないですか!
それで今まで通りの生活を続けて欲しいなんて……っ。


沸々と怒りが込み上げてくる。


どうして私はこんなバカでアホで、最低な男のことを少しでも好きなんじゃないかって思ってしまったのだろうか。
あの気持ちは幻、いや錯覚だったに違いない。


「そんなわけで、そろそろ戻ってきてくれないか?話をする相手がいないのは、想像以上に寂しくてつまらないんだぞ?」


一気に怒りが爆発してしまう。


「とりあえずこの手を離してくれないかな?アホ春樹」


顔を上げてニッコリ微笑み悠長に問いかけると、春樹は目をまん丸くさせ驚いている。

力が弱まった瞬間、素早く手を振り解き、いまだに瞬きもせず驚く春樹を真っ直ぐ見据えた。
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