この度、友情結婚いたしました。
そう自分に言い聞かせ、琢磨との待ち合わせ場所へと向かった。



「……いた」

辿り着いたのは約束の十分前にも拘わらず、琢磨は既に待ち合わせ場所へと来ていた。

いつもの見慣れたスーツ姿とは違う、普段着の彼はどこか別人に見えてしまい、声をかけるのに躊躇してしまう。


しばし数メートル離れて彼の様子を窺っていると、気づかれてしまった。
途端に琢磨はクシャッと表情を崩し微笑んだものだから、こっちは激しく胸を鳴らされてしまう。


「なにやってるの、そんなところで突っ立って」

「いや、その……」


あっという間に目の前まで来られてしまい、まじまじと見つめられては照れちゃうじゃない。

無意味に髪を手で整えてしまっていると、琢磨はクスリと笑った。


「今日の服、可愛い。……昔からカジュアルな服が似合っていたよな、まどかは」


殺し文句に唇を噛みしめてしまう。

琢磨は本当に私のことをよく見てくれていたんだね。そんなところまで覚えていてくれたなんて。


ジンとしちゃっていると、自分で言ってきたくせに照れ臭かった様子。

無駄に髪をガシガシして「行こうか」と目配せしてきた。

「……うん」

返事をすれば、ホッとしたように微笑むその姿に初デートの記憶が蘇っていく。
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