この度、友情結婚いたしました。
そのまま聞きたかったけど、言葉が続かなかった。

「そんな場所に私を連れてきてくれたのは、どうして?」って。


だってその答え、ちょっぴり分かっちゃった気がしたから。
私のことなら何でもわかると言っていた琢磨だから。……そんな琢磨に聞く勇気が出なかった。


それからまたしばし夜景を見つめること数分、隣から「フッ」と笑い声が聞こえてきた。


「ごめん俺、回りくどいこと言ったりして」

「え?」


その声にゆっくりと琢磨の方を見れば、彼も同じように私を見つめていた。
そして目が合った瞬間、今にも泣き出してしまいそうに瞳が大きく揺れる。


「言っただろ?……悲しいことがあると、ここに来たくなるって。それにまどかのことならなんでも分かるって。……気づいたんだろ?自分の気持ちに」

「琢磨……」


ギュッと心臓を鷲掴みされているように苦しくなっていく。


やっぱり琢磨には気付かれちゃったんだ。


「分かるよ、まどかを見ていれば。……つーか最初から分かっていたのかもしれない。俺には春樹からまどかを奪うことなんて、できないってこと」


吹っ切れた声に、ますます胸が苦しくなるばかり。


「昔からそうだった。お前らには誰も立ち入ることができないような、見えない絆みたいなものがあるなって。お互いのこと知り尽くしていてさ。……十年ぶりに再会した時、ふたりが結婚したって聞いてやっぱりって思ったくらいだ。例え友情結婚ってやつでも、お互いのことを知り尽くした上で一緒になったなら、それはもうとっくに友情の域を超えているんじゃないのか?」
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