この度、友情結婚いたしました。
諭すように言われても、なぜかしっくりとこない。

友情の域を超えている、なんて本当にそうなのかな?好きって気持ちも、まだまだ小さいものだし、おまけに春樹はあんなだし。


「春樹がどうかは分からないけど……でもね、私はそうなっちゃっていると思う」


ごめんね琢磨、もう二度と琢磨のことを傷つけたくないって思っていたけど、どうしても伝えたいの。

本気で奪うって言ってくれた琢磨に、今の私の正直な気持ちを。


「正直に言うと琢磨とこのまま一緒になった方が、私は幸せになれるんじゃないかなって何度も思ったよ。春樹と違って優しいし、一緒にいて落ち着けるし。これから先も幸せに暮らせると思う」


自分の幸せのことだけを考えたら、間違いなく琢磨と一緒になるべき。

あさみじゃないけど、誰に聞いたって間違いなく琢磨を選ぶべきだって言うと思う。


「でもそう思うたびに全部春樹との生活を比べちゃっているの。春樹に比べたら……って前提に考えちゃっている。こんなんじゃ、このまま琢磨と一緒になんていられないと思う」


「……うん」


琢磨は口を挟むことなく、何度も頷きながら話を聞いてくれている。
それが返ってより一層私の気持ちを昂らせた。


「ねぇ琢磨、気づいていた?……私達、再会してからほとんど昔の話しかしていないってことに。私もね、琢磨と一緒に過ごすたびに昔のことばかり思い出しちゃっていたの。……これってお互い昔のことを後悔したままで、前に進めていない証拠なんじゃないかな?」


ずっと相槌を打って聞いてくれていた琢磨の瞳は、大きく揺れ出した。
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