この度、友情結婚いたしました。
「昔の後悔を消したいだけなのかもしれない。……私も琢磨も」


そうでしょ?琢磨。
後悔しているって言っていたよね?二度と私を手離したくないって言ってくれたよね?

それって過去の後悔を埋めるためだけの気持ちなんじゃないかな?


「もうお互い気にするのはやめよう?あの時は浮気されて別れることになっちゃって、琢磨との思い出は全部悲しいものになっちゃったけど、今は違うから。私のこと好きでいてくれたからだったんだって分かったから。……だから琢磨ももう、あの頃の楽しかった思い出を全て後悔で埋め尽くさないで。楽しかったことだけ覚えていてほしい」


「まどか……」


たった一年間だけだったけれど、琢磨と過ごした日々は全てが初めてで今も思い出すと、胸が熱くなるから。


悲しげに唇を噛みしめる彼に笑ってほしくて、以前言われた言葉を思い出した。


「琢磨にさ、前に言われたじゃない?私に幸せになってほしいって。それは私も同じだから。琢磨には幸せになってもらいたいの。……でもそれはきっと、私と一緒にいたらなれないものなんだよ。琢磨を幸せにできる人は他の人だと思う」


琢磨に幸せになってもらいたい。でもそれには私は不必要。
きっぱりと伝えた瞬間、琢磨は吹っ切れたように大きく息を漏らし、頬を緩ませた。


「あーあ、容赦ないなまどかは」


「ごめんね、でも琢磨なら分かってくれると思って」


奪うとまで言ってくれた琢磨には、ちゃんと自分の気持ちを伝えないといけないと思ったの。例え琢磨のことを傷つけることになったとしても。


けれどその想いはちゃんと琢磨に届いてくれたようで、先ほどとは違い笑顔で一歩また一歩と私との距離を縮めてきた。
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