この度、友情結婚いたしました。
「早く逃げるんだっ」


その声が聞こえた瞬間、全てがスローモーションのように映し出されていく。


逃げまどう人達で辺りは騒然としているのに、私の視線は向かってくる女性から逸らせない。


どうして私を狙っているのだろうか。……そもそも面識もない。
けれど間違いなく彼女は私を狙っている。


「よくもっ……よくも私の春樹をっ……!」

「……え」


春樹……?


その声にハッと我に返った時には、既に彼女は目の前。


刺される!!


恐怖心からか動くことが出来ず、ただギュッと瞼を閉じた瞬間「死ねー」と、恨みの籠った声が響き渡ると同時に、悲鳴に包まれていく。


もうだめっ……!


痛みの恐怖を感じたその時。


「まどかっ!!」


思いっきり抱きしめられたと思ったら、勢いそのままに床に転がり込んでしまう。


「痛っ……」


すぐに襲われる背中の痛みと、圧し掛かる重み。

そして響き渡る悲鳴の嵐に、一瞬なにが起きたのか分からなくなっていく。
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