この度、友情結婚いたしました。
「俺もさ、今回のことはちょっと反省しているし懲りているんだ。またこの先ストーカーになっちまう女に捕まるより、昔から気心知れているまどかと結婚した方が、何倍もいいって思っているし」

目を輝かせて力説されるも、頷けるわけがない。

やんわり掴まれたままの手を離そうと試みるも、春樹はがっちり掴んで離してくれそうにない。

「いや……でもさ、いくらそう言ったって結婚ってやっぱりお互いに愛情がないと、成り立たないものじゃないの?」

そうよ、結婚ってそういうものでしょ?
例え未来になにがあろうと、まず最初にあるものは“愛情”のはず。
そんなもの、私達の間にはこれっぽっちもないじゃない。

なのに春樹は常識を覆すような、耳を疑うことを言い出した。

「別に今の世の中、本当に好きで結婚している奴らばかりじゃねぇじゃん。政略結婚とかまどかがさせられそうになっているお見合い結婚とかあるし」

そう言うと春樹は顔を近付けてきたものだから、一瞬胸が跳ねてしまった。

「なっ、なによっ!」

そして得意気に笑う春樹は、自信満々に言い放った。
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