この度、友情結婚いたしました。
「ねぇ、春樹。いい加減教えなさいよ。どこに行くつもりなの?」


散々聞いても教えてくれなかったけど、もうそろそろ教えてくれてもいいんじゃない?

そう思って聞いたけど、やっぱり春樹は教えてくれず、やってきた先はジュエリーショップ。


「は?ここ!?」


まさかここだとは夢にも思わず、すっとんだ声を出してしまう。

「そ、行くぞ」

そう言うと春樹は戸惑う私の手を取り、店内へと足を進めていく。

そして迷わずやってきた先は、ペアリングが並べられているショーケースの前。


「さぁ、まどか好きなものを選べ!」

「選べって……なんなの?急に。それに指輪なら今もしているじゃない」


そうだよ、つい数カ月前に購入したばかりの新しいものが、お互いの左手薬指にはめられているのに。


意味が分からず顔を顰めてしまうと、春樹は急に照れ臭そうに頭を掻き出した。


「バカかお前は。それは友情結婚した時に買ったやつだろ?……今の俺達は違うじゃん。だから指輪も新しくしようぜ」

「春樹……」


驚いた。そんなこと気にしてくれていたなんて……。

なによ、らしくないことしてんじゃないわよ。

こんなことされちゃったら、ますますあんたのこと好きになっちゃうじゃない。

キュンキュン鳴ってうるさい胸を押さえながら、あるペアリングを指差した。
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