この度、友情結婚いたしました。
それ以降お互い話すことなく立ち上がり、就寝の準備に入る。


歯を磨いてトイレを済ませて。
いつもだったらここで「おやすみ」と言って、別々の寝室に入るところだけど、ふたりとも足が止まってしまう。
そして廊下で見つめ合うこと数十秒。


「俺の部屋でいい?」


真意を探るように投げ掛けられた言葉に、激しく胸が高鳴る。

同意するように深く頷くと、そっと取られた手。
顔を上げれば、それを待っていたように春樹と視線がかち合った。


「あのさ、部屋に入ったらいつもの俺達になるの、禁止な」

「……分かってるよ、そんなこと」


そもそもこれからの情事を考えて、いつものように振る舞えって言う方が無理な話だ。

ジロッと一睨みして言えば、春樹は目を細め微笑んだ。


いつも人をバカにしたように笑っていたというのに、こんな甘い顔をして微笑まれちゃったら、憎まれ口も叩けなくなる。


「それと今さらお決まりの〝やっぱり待って!〟って言うのも禁止だから」

「心得ております」
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