この度、友情結婚いたしました。
言いたいことも言えて、妙にスッキリした。

あとは春樹のバカのせいで、匂いがついてしまったソファーを除菌するのみ。

早速春樹が見ている目の前でふんだんにファブリーズをかけ始めると、「げっ」とあからさまに嫌がる声が聞こえてきた。

「なんだよ、嫌味ったらしいなぁ。別に俺が見ている前で早速やることねぇだろ?」

「なに言ってるのよ。早くしないと匂いがついちゃうでしょ。……嫌いなの、煙草の匂い」

「それは知ってるけどさ……仕方ねぇじゃん。会社で吸ってるやつが多いんだから」

「それプラス甘~い香水の匂いもだめなんです!いいから早くシャワー浴びてきなさいよ。遅刻するわよ」

ファブリーズをかけながら言うと、春樹は「やべっ」と声を荒げ慌ててバスルームへ駆け込んだ。
すぐにシャワーの音が聞こえてくると、どっと疲れが押し寄せてきた。

「もう朝からなんなんだ」

大嫌いな匂いに目を覚まされ、春樹の女癖の悪さを痛感させられ、こうして除菌作業させられ……。


「本当……この結婚、失敗したかも」


あさみの昨日の言葉が脳裏をかすめる。

老後までふたりで無事に生活を共にすることなど、できるのだろうか。

一抹の不安を覚えながら、今日も春樹との新婚生活……いや、ただの共同生活が始まった。

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