わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「俺は奈月に聞いて知っていたんだけど、奈月から自分で教えろと言われて、何となく言い出せなかった」

「拓馬でもそんなことあるの?」

「あるよ。美月に関することなら。本当は毎日メールを送りたくてたまらなかったんだけど、これで心置きなく送れる」

 嬉しいけれど、引っ掛かりのある言葉だった。

 拓馬は誰かと頻繁にメールのやり取りをしているのだから。

 だが、わたしはその問いかけをひっこめた。

 拓馬にだって親しい人がいるのだ、と。

「言わないならキスでもしちゃおうかな」

 そう言うと、拓馬はいたずらっぽく笑い、わたしに顔を近づけてきた。

「な、何を言うのよ。キスしないって約束したじゃない」

「そんな約束したっけ?」

 そういうと、わたしとの距離を狭めてきた。わたしは後ろにのけぞる。だが、頭に壁がぶつかる。

 彼はわたしを端まで追い詰めたからか、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべてきた。

 だが、彼の手がわたしの頬をなぞる。

「笑ってくれてよかった」
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