わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「少しはよくなりました」

 彼女はそういうと、わずかに目を細める。そう普通に接してくれると本当に可愛いのに。

「鞄も持とうか?」

 彼女のふらつく足取りを見逃せずにそう問いかけた。

「大丈夫です」

 彼女は吐息混じりに大丈夫と言葉を漏らす。

最初はまたリズムよく歩いていたが、そのスピードも徐々に減速してきた。

わたしの家の前を通り過ぎる頃にはスピードも半分ほどになり、息も乱れていた。

親に車を出してもらおうとも考えたが余計な気を遣わせてしまうのではないかと思い、その提案を口にすることはなかった。

 彼女の足が茶色の外壁のマンションの前で止まる。

 一面ガラス張りとなった入り口まで一緒に行く。

「大丈夫?」

 荷物を渡しながら問いかける。彼女は顔をこわばらせながらもうなずいていた。

荷物がわたしの手から翔子の手に移った。

「今日はゆっくり休んでね」

 振り返った時、水滴が目の前を駆け抜けた。雨が降り出したのだ。

「傘、持っていませんよね。貸しましょうか?」
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