わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「大丈夫だよ」

 と口にはするが、一気に雨脚が強まる。雨に臆したわたしの気持ちに気付いたのか、翔子はそっとわたしに手を差し伸べた。

「ここにいたら冷えますから上がっていってください。わたしの家は誰もいないから」

 彼女は笑顔で口にする。

 一緒に中に入り、エレベーターまで行く。

彼女はボタンを押すと、息を吐く。エレベータはすぐに一階に呼び戻され、扉が開く。

翔子は息を漏らすとそれに乗り込んでいた。

わたしも遅れないようにそれに乗り込む。

彼女は十のボタンを押すと扉を閉めていた。エレベーターが一度ゆれると、ゆっくりと動き出す。

 わたしも彼女も話をしなかった。だが、不思議と気まずさはない。

しばらく経ち、扉が開く。彼女は扉を開けたまま、顎をしゃくりわたしに先に外に出るように促していた。

外に出た彼女が先導するように歩き出した。

広さのあるマンションだが、このフロア部屋数はそこまで多くないようだった。

恐らく部屋の一つずつが広く作られているのだろう。

彼女の足は一〇〇一と書かれた部屋の前で止まる。カードキーを差し込みドアを開ける。

わたしを見ると笑顔を浮かべていた。

わたしは彼女に頭を下げると、家の中に入ることにした。
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