わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 二人とも綺麗な顔立ちをしているとは思うが、あまり似ていなかった。遠縁といえばまた従兄弟か、そのまた一つ離れているのかといったところだろうか。

「家は近いの?」

「そこそこ。歩いて三十分くらいかな」

「市井さんは中学からこの学校?」

 彼は頷いていた。

「翔子は高等部から入ってきたんだ。あいつは一人暮らしだから、俺が一緒のほうがいいだろうってことになってさ」

 翔子は拓馬と同じように外部から入ってきたんだ。高等部の試験はかなりの難関だと聞く。彼女も成績がいいのだろうか。

 彼は渡り廊下を横断すると、植物がうっそうとしている中庭に入っていく。

その先にベンチがあり、髪の毛の長い少女が木陰で佇んでいた。

「よかったら仲良くしてやってよ。あいつはあんな奴で口は悪いけど、悪い奴じゃないから」

「それは分かるよ」

 市井さんは微笑んでいた。

「翔子」

 彼が呼ぶと、彼女は顔を上げる。

「学校では呼ばないでって言ったでしょう」

 その彼女の言葉が止まる。彼女はわたしを見ていた。そして、頭を下げていた。
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