わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「なら、お母さんに伝えておくよ」

 奈月は強引に話を進めると家に電話をしていた。

 拓馬はちらりとわたしを見ただけで、そそくさと歩き出してしまった。

 家に着くと母親が出迎えてくれ、奈月は母親と一緒にリビングに入っていく。

「どうする?」

「美月の部屋にいっていい?」

 わたしは拒む理由もなかったため、拓馬を部屋に招くことにした。


 ドアを開けると、拓馬を部屋に招く。彼はわたしのへやに入ったものの、ドアの付近で一歩も動かなかった。

「さっきのこと気にしているの?」

 拓馬は頷く。

「奈月のことだよ。奈月の好みのタイプを聞かれた。でも、言わないでね」

「てっきり美月が告白でもされたのかと思った」

「それはないよ。わたし、告白されたことないもの」

 わたしは慌てて否定する。

「まさか妬いていたの?」

 彼のことだから、そんなことはないと軽く笑うのだと思っていた。だが、彼は私から顔を背けると、頬を赤く染めていた。想像外の反応に戸惑い、拓馬を凝視していた。彼は白い歯で軽く自分の唇を噛んでいた。

「妬いてるよ。子供っていわれようが、ガキって言われようが。それでも」

 そう彼は言葉を飲み込み、私をじっと見る。その睨んではいないが、刃のような視線に体全体が固まってしまったように動けなくなる。



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